♢新しい出会いと予期せぬ仲間
翌日から、シャルが遊び、いや、冒険の誘いに来なくなった。
恥ずかしがってる……のか? それとも嫌われた……? いや、もしかして俺のレベルに気づいたとか――魔物の大量討伐がバレたとか……? はぁ……。
まあ、友達はシャルだけじゃないし、別にいいけどさ。 ……でも、シャルより仲のいい友達なんて、他にいないんだよな。
仕方なく村をぶらついていると、ふと視界の先に見覚えのある姿が入った。
家の前の道端に、一つ年下のアリアがぽつんと座り込んでいた。 手にした木の枝で、地面に何かを描いている。 小さく丸まった背中が、どこか寂しげで――まるで声をかけるのもためらわれるほどに。
「アリア〜、暇そうだな?」
ユウヤが声をかけると、アリアは顔を輝かせた。
「あぁ〜! ユウくんっ! わぁ〜いっ!」
駆け寄ってきて、抱きついてくるのが可愛い。アリアは魔法の覚えが良く、魔力量も多くて頭が良い。そのせいで、同じくらいの年の友達からは避けられていることが多く、一人でいることが多かったのだ。
「ね〜ユウくん。一緒に遊ぼう?」
「良いぞ〜」
シャルが誘いに来ない時は、アリアと遊ぶことが多く、すっかり懐かれている。いつも一緒に遊んでいると甘えてくるんだ。俺も、そんな甘えてくるアリアが可愛くて好きだ。それに、俺が魔法のレベルを合わせているのが、魔法の得意なアリアだ。大体の魔法の強さを参考に、俺の出力の基準を合わせている。
それにアリアは、魔法攻撃、防御、支援、回復と珍しく何でも使えて、低級から中級レベルの魔法を使いこなせる。周りの大人から一目置かれているせいか、友達から距離を置かれているんだ。優秀すぎるとこうなっちゃうんだな。
「今日は、何をする?」
「ん〜何でも良いよー。ユウくんに任せる〜」
「アリアは魔法が得意だし、森に行って魔獣の討伐をしないか?」
ユウヤが提案すると、アリアは少し考えてから答えた。
「……良いけど。森の奥までは行かないよ〜?」
うわぁ。なんだろう……。この安心できる感じ、新鮮で落ち着くな。いつもは、それが俺が言うセリフだし。
「分かってるって。アリアとは初めて組むしな〜」
アリアとは、村の中にある広場か空き地で遊ぶのがほとんどで、討伐というか森に入るのは今回が初めてだ。だから、お互いの実力はまだ知らない。
「うん」
「お互いの実力も分からないしな」
「うん。でも……ユウくんなら、安心だな〜♪」
アリアがユウヤの言葉に微笑み、安心したように言った。
アリアと歩いて森へ向かっていると、途中でシャルが他の男子と遊んでいるのが見えた。途端にイラッとした感情がわいてき。まるで俺がシャルにヤキモチを妬いているみたい……でイライラするし、気になってつい表情に出てしまっていた。
「ユウくん? 大丈夫? 怒ってる? わたし、何かやっちゃったかなぁ?」
アリアがユウヤの顔色を伺い、心配そうに尋ねた。
「あ、ちょっと嫌なもの見ちゃって……アリアのせいじゃないから。ごめんな!」
なんだよ、シャル。冒険者になるとか言っておいて、自分は男子の友達と楽しく遊んでるのかよ……。それって、冒険者になることを諦めたってことか? ってことは……俺は一人か……? アリアをパーティに誘えば、来てくれるのかな? とはいえ、アリアが13歳になるまで、あと1年は待たなきゃ正式に冒険者パーティは組めないからな。
でも……魔術師だけのパーティってどうなんだろう? あまり聞かないけど……大丈夫かな?前衛がいないのは、ちょっと不安だな……。
森に着いたが、アリアも魔法の練習とレベル上げで何度も友達と入っているらしく、緊張した様子もなく落ち着いていた。
「大丈夫か?」
ユウヤが尋ねると、アリアはにっこり笑った。
「うん。大丈夫だよ♪ユウくんと一緒にいるからかなぁ……」
隣にいるアリアが、俺を見て微笑んで服の袖を掴んできた。
頼られている感じがして嬉しくなり、俺も微笑み返した。
「魔術師だけのパーティだな」
ユウヤがポツリと呟くと、アリアは少し不安そうな顔をした。
「うん。だね〜。わたし初めてかも……いつもは、剣とか槍を使う人が前衛で守ってくれて、安心だったんだけど……大丈夫かなぁ……?」
「ま、いざとなったら、転移で逃げれば大丈夫だろ! 俺がアリアを守るし」
アリアが「守る」という言葉に反応して、頬を赤くして抱きついてきた。
「ユウくん……。ありがとぉ〜っ。うん! 頼りにしてるー♪」
アリアに頼られて、少し照れるなぁ……。俺の転移スキルは村の人全員が知っているから隠す意味はないし。今回は暇つぶしのお遊びだし、適当に遊んで帰ろう。
「危険になったら、逃げようね」
「無理をして戦う意味はないしね!」
アリアは、ユウヤの言葉に同意した。
森に入り、魔獣が現れるとアリアが魔法を平然と放った。ボシュ! ボシュ! ボシュ! と、やたらと早い速度でクールダウン無しで連続して魔法を放っていた。
ん? あれ? アリア……? 詠唱は? 俺も詠唱なしだけどさ。確か、それはかなり上級の魔術士のスキルだよな……? それに……クールダウン時間は!?
普通は、魔法を放ったら次の魔法を放てるまでのクールダウンタイムが存在する。それに、魔法の種類によっては放てるクールダウンタイムの時間が違う。強大な魔法や上級魔法は、より時間がかかるんだ。
今回、使用しているのは低級の魔力弾だが……多少はクールダウンタイムが存在するはずなんだけど。それ以前に、詠唱していないじゃないか?
「な〜アリア?……詠唱は?」
ユウヤが尋ねると、アリアは驚いた表情をして、一瞬固まっていた。
「あ、忘れたっ! ユウくん……内緒ね。他の人に言わないで……また引かれちゃう」
苦笑いを浮かべて気まずそうに、「内緒ね」と可愛く言ってきた。
「ふぅ〜ん……」
そんなアリアを見て、俺はニヤッと笑った。
「……ユウくんっ! 変なこと考えてる? なにぃ……その笑い〜?」
アリアが俺のニヤッとした笑いに警戒しつつも、なにか期待をしている表情で俯きチラチラと俺を見ていた。
「アリアさ……一緒のパーティに入ってくれない?」
ユウヤが誘うと、アリアは少し戸惑ったように尋ねた。
「……良いよぅ。でもユウくん、パーティは他に誰がいるの?」
あれ? すんなりと受け入れてくれた? もっと困ったり、悩んだりするかと思ってたのに。
「……俺と、アリアだけだけど……良いかな? 魔術師二人の珍しいパーティになっちゃうんだけどな」
「うんっ。入る! ユウくんと一緒のパーティに入りたい!! やったぁ〜♪」
アリアは、満面の笑みで即答した。(え? おかしなパーティだから、少しは嫌がるかと思ってたけど……? だって魔術師だけのパーティだよ? しかも二人だけだけど……良いのか?)
遊びに行く友達を決めるのとは違う。パーティを決めるのは、命を預け、命を預かる相手を決めることなので、簡単に決められることではない。しかも少人数の2人だけという編成だ。普通は5人パーティが一般的で、少なくても3人は必要だ。
「え? 良いの? 俺と2人だけだぞ?」
ユウヤの方が驚きの表情をして、アリアに聞き返した。
「うん。ユウくんと一緒なら安全だし……仲良しだし!」
「そっか……脅そうなんて考えてごめん」
そんな無邪気というか、笑顔で言われると……弱みを掴んで脅かしてパーティに入ってもらおうと考えていた自分が、恥ずかしくなってくる。半分、ダメ元だったし……本気で脅そうなんて、全く考えてはいなかったけどね。
「え? あ、良いよ〜それだけ、わたしが必要って思ってくれてたんでしょ? 少し嬉しいかもっ♪ 普段は、そういうことをする人じゃないの知ってるしー!」
ん……俺を良く思いすぎじゃないかな……。まあ、実際に脅したり、悪意のある騙したりしたこともないけどな。
「それに、村の子供でわたしと同じくらいの魔法を使えるの、ユウくんだけだし」
なんだかアリアとなら仲良く、冒険できるかもしれないな……。優しいし、大人しいけど頼りになるし……無茶をしないし。
俺も魔物の討伐に参加し、パシュッ! パシュッ! パシュッ! と連続で魔法を放つと、アリアが「え!?」という顔で見つめてくる。
「ユウくん……? ユウくん、詠唱は? えへへ……♪ わぁ……おそろいだね〜♪」
アリアがにこっと微笑み、俺も無詠唱だと知ると安心したのか、バシュッ! バシュッ! と魔法を無詠唱で放ち、魔物を討伐した。こうして、前衛が必要ない珍しいパーティが結成されたのだった。
♢変わってしまった関係 思い出したように怯えた表情で話してきたシャルは、話し終わる頃には表情を変え、顔を赤くさせていた。 まあ……あれは、怖かったと思うけど。シャルは俺たちをパーティだと思っていたのに、何の相談もなしなのか? 会いに来ないばかりか、他の男子と仲良く遊んでいて、今更「やり直そう」って言われても無理だろ。「冒険者になりたいなら、他の男子とパーティ組めば良いじゃん。仲良さそうだったろ。俺はアリアとパーティを組んでるし」 ユウヤが突き放すように言うと、シャルは泣きそうな顔で訴えた。「うん……知ってるよ。私も一緒に……。私は、前衛だしさ……力になれるよ。絶対!」 残念だけど、前衛は必要ないんだよな……むしろ、入られると動きにくくなると思う。 シャルが加わるとなると、支援魔法に回復魔法、それに援護魔法まで必要になるだろ? でも今のところ、アリアと一緒に魔物討伐してて、支援も回復も一度も使ったことがない。 それどころか、攻撃を受けたことさえ一度もない――そういう意味では、かなり優秀なパーティなんだ。 まあ、まだ低級の魔物ばかりだけどさ。「必要ないって。他で頑張ってよ……。一緒に遊んでた男子も、冒険者を目指してるんだろ?」 ユウヤは、シャルの目をまっすぐ見て言った。「え? そんなぁ……。別に、あの友達は暇つぶしで遊んでただけで……。ユウくんみたいに仲は良くないよ。一緒のパーティになろうとも思わないし……そこまで信頼はできないしさぁ」 シャルは、必死に弁解した。「いきなり何も言わずに消えたと思ったら、他の男子と仲良く遊んでるし。俺が上手くいきだしたら、やっぱり一緒にって無理だって。友達としては良いけどな。まあ……来年には、この村を出ていくけどね」 ユウヤがそう告げると、シャルは顔色を変えた。
♢無詠唱の力と新たな一歩 前衛は、詠唱時間を稼ぐための存在とも言われている。そのため、体力、防御力、そして敵を攻撃したり身動きを取れなくしたりするための押さえつける力が必要だ。前衛は最強のイメージがあるが、前衛だけのパーティは珍しく、中級レベルの魔物討伐がせいぜい一般的だ。前衛は支援魔法が無ければ、魔物や魔獣のランクが上がってくると、剣が通用しなくなってしまう。 魔術師の方は通常、低級の魔物討伐止まりだ。中級レベルの魔物相手に、逃げ回りながら詠唱ができるわけがない。魔術師が中級の魔物相手を押さえつけ、詠唱できるわけがないのだ。 だけど、俺たちは無詠唱なので、前衛は不要っぽいな。こっそりと転移をして人がいない場所で、上級魔法を無詠唱で放てるか実験したことがあって、成功しているし。 初パーティでの魔物討伐は、アリアの無詠唱を知ることができたし、何よりアリアとパーティを組めて嬉しかったので大成功だった。 ♢ギルド登録とシャルの再登場翌日……「ユウくん。さっきね〜魔物の討伐を友達に誘われちゃった。でも〜ユウくんとパーティを組むことにしたって言って、断っちゃった〜♪」 嬉しそうに笑顔で話してきて、褒めて欲しそうな感じでニコニコして見つめてくる。「アリアは、やっぱり人気があるんだな」 そんなアリアの頭を撫でて褒めてやり、パーティに入ってくれたことに感謝した。「そんなことないよ〜。多分ね、魔術師がいなくて仕方なくじゃないかな〜」 「他のパーティに行くなよ?」 「大丈夫だよ。えへへ……♪ わたしはユウくんと! って決めたしぃ」 アリアとパーティを組んでみて、何の不都合もなく楽しく魔獣や魔物の討伐練習ができた。だいぶ自信をつけたので、アリアの勧めもあって冒険者ギルドへ登録しに行くことにした。 ちょっと不安に思っていたけど……魔力測定やレベル測定を警戒していたが、そんなものはなかった。 この世界は、依頼を達成するとポイントが入る仕組みらしく、強さやレベルでランクが決まるのではなく、依頼達成の実績でランク
♢新しい出会いと予期せぬ仲間 翌日から、シャルが遊び、いや、冒険の誘いに来なくなった。 恥ずかしがってる……のか? それとも嫌われた……? いや、もしかして俺のレベルに気づいたとか――魔物の大量討伐がバレたとか……? はぁ……。 まあ、友達はシャルだけじゃないし、別にいいけどさ。 ……でも、シャルより仲のいい友達なんて、他にいないんだよな。 仕方なく村をぶらついていると、ふと視界の先に見覚えのある姿が入った。 家の前の道端に、一つ年下のアリアがぽつんと座り込んでいた。 手にした木の枝で、地面に何かを描いている。 小さく丸まった背中が、どこか寂しげで――まるで声をかけるのもためらわれるほどに。「アリア〜、暇そうだな?」 ユウヤが声をかけると、アリアは顔を輝かせた。「あぁ〜! ユウくんっ! わぁ〜いっ!」 駆け寄ってきて、抱きついてくるのが可愛い。アリアは魔法の覚えが良く、魔力量も多くて頭が良い。そのせいで、同じくらいの年の友達からは避けられていることが多く、一人でいることが多かったのだ。「ね〜ユウくん。一緒に遊ぼう?」「良いぞ〜」 シャルが誘いに来ない時は、アリアと遊ぶことが多く、すっかり懐かれている。いつも一緒に遊んでいると甘えてくるんだ。俺も、そんな甘えてくるアリアが可愛くて好きだ。それに、俺が魔法のレベルを合わせているのが、魔法の得意なアリアだ。大体の魔法の強さを参考に、俺の出力の基準を合わせている。 それにアリアは、魔法攻撃、防御、支援、回復と珍しく何でも使えて、低級から中級レベルの魔法を使いこなせる。周りの大人から一目置かれているせいか、友達から距離を置かれているんだ。優秀すぎるとこうなっちゃうんだな。「今日は、何をする?」「ん〜何でも良いよー。ユウくんに任せる〜」「アリアは魔法が得意だし、森に行って魔獣の討伐をしないか?」 ユウヤが提案すると、アリアは少し考えてから答えた。「……良いけど。森の奥までは行かないよ〜?」 うわぁ。なんだろう……。この安心できる感じ、新鮮で落ち着くな。いつもは、それが俺が言うセリフだし。「分かってるって。アリアとは初めて組むしな〜」 アリアとは、村の中にある広場か空き地で遊ぶのがほとんどで、討伐というか森に入るのは今回が初めてだ。だから、お互いの実力はまだ知らない。「うん」「お互いの
♢予想外のダンジョン落ち 色々な場所で遊び、時には魔物との戦闘も交えながら冒険を続けているうちに月日は流れ、俺もシャルも13歳になっていた。シャルは、ついに本物の剣を扱えるようになっていた。「ねぇ〜。最近、低級の魔物とか魔獣の討伐、余裕だよね?」「毎日、飽きずに森に通って討伐もしてるし、俺たちも少しは強くなったんじゃないかな」 シャルが本物の剣を扱うのに多少慣れてきたので、父親からも普段から帯剣して良いと許可が下りたらしい。それからは毎日、飽きずに森へ通って低級の魔物や魔獣を倒していた。「だよね、だよね〜。今日は、少し違う所に行ってみない?」 シャルは、目を輝かせながら新しい場所への探索をしたいらしい。「はぁ? ダメだって。まだ危ないって言ってるだろ」 ユウヤは、シャルの無謀な提案に釘を刺した。シャルが一度言い出すと、人の言うことを全く聞かないんだよな……本当に面倒だ。「大丈夫でしょ。危なくなったら、ユウヤの転移があるしさ」 シャルは、ユウヤのスキルを頼りに、強気に迫る。「はぁ〜? 危なくなったら、すぐに帰るからな」 ユウヤは、仕方なく折れることにした。「分かってるってば!」 最近では低級の魔物や魔獣を倒せるようになっていたので、二人で調子に乗ってしまっていた。普段は近づかなかったダンジョンの近くまで来てしまっていたのだ。「この辺に現れる魔獣は楽勝だね!」「まあ〜低級っぽいしね。でも、この先はダンジョンがあるから中級の魔物や魔獣も現れるようになると思うよ」「中級か〜楽しみかもー!」 ダンジョンの中は危険だとお互いに理解していたので、中には入らず、ダンジョンの近くをうろついていた。すると、突然シャルが視界から消えた。地底に落ちるようなシャルの叫び声が、地面の下から聞こえ、遠ざかっていく。慌ててシャルの気配に、無詠唱でバリアを張り、衝撃に備えた。「キャァーーー!!!」「シャルー!!」 ドカンッ! と、何かが着地したような音が鳴り響いた。シャルの無事を確かめるため、ライトの魔法で地底を照らすと、シャルの周りにウジャウジャと魔物や魔獣が大量にうごめいていた。低級から上級の魔物までがシャルを取り囲み、攻撃していてバリアが耐えきれそうにない。「シャルー大丈夫かー!?」「キャァーーー!」 シャルは悲鳴を上げ、そのまま気絶したようで声
俺は、前世の記憶を持ったまま転生した。 前世――地球と呼ばれる世界で、20代になったばかりの頃、俺は会社で猛烈に働いていた。 深夜まで残業をこなし、誰よりも早く出社しては翌日の準備や、後輩への仕事の割り振りに頭を使う。 その努力が認められ、チームリーダーにも昇進し、仕事も面倒だった人間関係も順調だった――あの瞬間までは。 一瞬の油断。交通事故に巻き込まれ、俺の命はあっけなく終わった。 ……頑張って生きてきたご褒美だったのか、それとも、ただの巡り合わせか。 理由は分からないが――俺は、新たな世界へ転生を果たしていた。 転生先は、魔法が存在し、魔物が闊歩する異世界。 しかも俺には、珍しいスキルが備わっているらしかった。 前世であれほど必死に働きながらも、死は理不尽で突然だった。 だからこそ今度こそ、与えられたこの希少なスキルと魔法を思う存分活かして、 最初から“スローライフでのんびりと人生を過ごしたい!”と、強く願った。 生まれた家は平民で、裕福ではないが貧しくもない、ごく普通の家庭だった。 自由に遊んでいても文句を言われることのない程度の暮らし――それが、正直ありがたかった。 俺が望んでいるのは、豪勢な暮らしでも、莫大な富でもない。 少しだけ働いて、趣味の時間を多めに取り、それなりに不自由のない生活ができれば――それで充分だ。 ♢幼馴染との日常 月日は流れ、この世界にもすっかり慣れてすくすくと育った俺は、毎日幼馴染の友人と仲良く遊び歩いていた。「ユウヤ、魔物の観察に行こうぜ〜!」「襲われるから危ないって!」「それは知ってるって! だからユウヤを誘ってるんだろー!」 毎回、こうして強引に誘われるんだ。危ないって言っているのに、全く聞いてくれない。一体何が楽しいんだろう?「毎回不思議に思ってたんだけど、なんで魔物とか魔獣の観察なんだ? 何が楽しいんだ?」 シャルロットは小さく首を傾げて、驚いたような表情で俺の顔をじっと見つめてきた。 ……逆に、俺のほうがその反応に驚くんだけど。 シャルのその顔――たぶん、自分が「面白い!」と思ったことは、俺も当然そう思ってるって前提でのリアクションなんだろうな。 無邪気というか、絶対的というか……こっちの戸惑いなんて、これっぽっちも想定してなさそうだ。「面白いかぁ?」「面白いの! 私、大きくなったら冒険